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みまき温泉診療所 Mimaki Onsen Clinic

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健康フォーラム

亜鉛欠乏症と臨床

亜鉛欠乏症と皮膚疾患 臨床症例集③

亜鉛欠乏症と皮膚疾患 臨床症例集③
亜鉛欠乏による多彩な表皮症状

slide 01:亜鉛欠乏による多彩な表皮症状

亜鉛欠乏症の臨床はまだ判らないことだらけで、その多彩な欠乏症状でさえその全貌は明らかでなく、まだまだ「群盲象を撫す」の状態であると言えよう。

しかし、判ってきたこともまた多く、確かなこと、らしいこと、推測されること等など、社会でその知見を広く共有し、検討して、より正しい亜鉛欠乏症の医療の確立に努める時であると思う。

そこで多彩な症状・疾患のうち、写真などの視覚化で共有・検討し易い皮膚の症状・疾患について、私共が実際に経験したものを中心に、出来るだけ社会に周知して、批判と共に追試をお願いし、より正しい知見に高めて行きたいと考え、診療所のHPで公開することとした。なお、批判ご意見は 【掲示板:亜鉛欠乏症について】  にお寄せいただければ有難いと思う。

なお、症例は、治験数や出来るだけシッカリしたnarrative Evidenceのあるものを中心としたが、中には少数例でも可能性の高いものも、それぞれ出来るだけ表現を明確にして載せました。厳しい批判と追試を、是非是非お願いしたい。

slide 02:多彩な表皮症状①掻痒

【記】

皮膚疾患・皮膚症状に共通する症状は何と言っても『掻痒』です。何故?種々のレベルの掻痒があるのか?原因不詳の掻痒の原因は?掻痒については判っている様で、判らないことだらけです。

種々の皮疹の発症前に、多くの人が種々の程度の全身あちこちの掻痒・痒みを訴えることが経験されるが?何故なのか??

②の症例は精神的な障碍により、意思の疎通が困難な方の両肩部の掻爬痕そうはこん(ひっかき傷)と長年にわたる掻爬そうはの繰り返しによる同部の色素沈着の所見です。

この方は注射が大嫌いで拒否、採血は不可能で血清亜鉛値の推移を調べることは出来ませんでした。しかし、亜鉛補充療法で明らかに掻爬及び掻爬痕の減少が認められました。

スライド8の多剤服用症例の下腿に複雑な皮疹が発症した症例の左肩部の写真です。皮疹発現前からの全身の掻痒で、慢性的な掻爬による色素沈着と掻爬痕です。この症例に限らず亜鉛欠乏症症例では、激しい掻痒症状が単独、または多彩な亜鉛欠乏症状と合併して、他の皮膚症状が顕在化する前に、全身あちらこちらの掻痒症状として、しばしば現れることがあります。

④急性湿疹・皮膚炎や⑤手掌や足底の皮膚の肥厚や発赤、小水疱などの皮疹に合併して軽度から激しい掻痒が伴いますが、亜鉛補充療法では必ずしも皮疹病勢と平行した経過をたどらず掻痒のみ軽快することしばしばです?掻痒の亜鉛との関係の追及が必要では?と考えます。

写真は余りにも一般的なので省略しましたが、①高齢者の乾燥肌傾向で皮疹のない、いわゆる①老人性皮膚掻痒症では、亜鉛補充療法により比較的短期間に掻痒が軽快して、あまり困らなくなる症例が多い。その効果も適宜亜鉛の維持療法で継続させることができます。また、同症は、亜鉛補充による血清亜鉛値の推移からも、ほとんどの症例で亜鉛欠乏症としてよいと考えられる。しかし、少数例であるが、中には亜鉛補充で、かえって掻痒が憎悪するものがある。何が異なるのか?

④や⑤の様に皮疹に伴う掻痒・痒みは、なんとなくこれまでの掻痒理論で納得していたところでですが、皮疹の病勢に関わらず、亜鉛補充により掻痒の程度が劇的に軽快することしばしばです。是非とも、掻痒と亜鉛の関係、亜鉛と皮膚の関係について、皮膚科医が関心を持ってほしいと思う。

slide 03:出来ることなら誰かにくれてやりたい掻痒

【記】

2016.08.22 初診。掻痒激しく、『替われるものなら、替わってもらいたい!!』 長く皮膚科に通院しているが良くならないと受診してきました。両前腕を中心に急性湿疹様の皮疹がびっしり。出来ればこの腕、誰かにくれてやりたいほど、痒みが辛いと言う。

軟膏療法はそのままに、通常の亜鉛補充療法を開始。補充療法により掻痒は急速に軽快し、2016/09/05 痒みあるが1/2程度に、皮疹も軽くなった。1ケ月後の09/21にZn:97μg/dL。前と比較して全く痒みなし。痂皮もなし。

それなりの皮疹があっても。補充療法で急速に掻痒が軽快しました。皮疹の軽快と掻痒が乖離している感じがぬぐえません。

slide 04:多彩な亜鉛欠乏の表皮症状

【記】

多くの人、特に高齢の方々の皮膚にしばしば出現する、亜鉛不足を示唆する表皮の症状には、①の掻痒・痒みについで、この⑥ ⑦ ⑧ ⑨の易発赤性、表皮内出血、剥皮、表皮の菲薄化などです。お年寄りにはしばしば見られる皮膚所見ですが、典型的な亜鉛欠乏症の表皮所見と言えます。

⑨の表皮の菲薄化はテカテカと光る感じがあり、その程度にもよりますが、真皮の菲薄化が伴うと表皮下直下に血管が透けて良く見えるようにもなり、進行すると⑧のごとく表皮が、また、軽い外力でも真皮層を含めて、広範にペロリと剝皮します。

これまでは高齢で、老化のためとされていたものですが、亜鉛補充療法で、比較的短期間で水疱形成や剝皮しない健常な表皮に戻り、維持することも可能で、亜鉛欠乏による皮膚症状であることが判ります。

亜鉛のどの様な生体内機能の低下によるものかの詳細は不明ですが、亜鉛の表皮、真皮、皮下組織を含めての健常な皮膚の生成・維持機能の異常が生じているものと考えています。

兎に角、これ等の症状で気付いて、論理的な亜鉛補充療法や維持療法で褥瘡などの予防はもちろん、より健常な皮膚の維持が可能です。

slide 05:表皮内出血

【記】

写真のごとく表皮内出血の方は打撲などの特別な外傷の記憶がなく、手背や前腕の表皮内に出血斑が生ずることが多い。血液、凝固系には問題なく、表皮や皮膚の菲薄化や剝皮が合併して生ずることが多い。

この症状を認めたら亜鉛欠乏症の所見として、血清亜鉛値の測定や亜鉛補充療法の試行をすると潜在の欠乏症状など発見されることも多く、また出血斑の消失や菲薄化の改善など、より健常な皮膚となる。

褥瘡が発症しやすい状態の方では、当然、予防効果がある。

slide 06:剥皮・水疱の脆弱な皮膚

【記】

2010/10 頃より食欲減退、体重減少があり、約半年の亜鉛補充療法で食欲増、体重も増え、補充療法を終了した。

2012/10 主に下腿に掻痒あり、10/31より補充療法開始した。

2012/11 掻痒は改善したが、在宅での薬剤管理に問題あり、ヘルパー管理とする。

2013/01 剥皮、水疱形成など暫く続く。特養に入所。

2013/01/09 Zn:100μg/dLとなり、以後剝皮、ビランは急速に改善。2013/01/23、02/06、03/06、04/26と 表皮がどんどん厚く健常化しているのがわかる。

亜鉛欠乏症の皮膚は全体的な掻痒や菲薄化で、易発赤性、水疱形成、易剝皮、表皮内出血等などは表皮の典型的な表在性の所見である。表皮が菲薄化すると一見、テカテカと光り、体を持ち上げたり、腕を握ったりしただけでも表皮内出血や表皮の剝皮が生ずることもある。

さらに、真皮の菲薄化、脆弱性が進行すると皮膚が薄くなり、外力により容易にベロリと広範囲に剝皮し、さらに真皮層の膠原繊維の減少などの脆弱性から容易に裂創さえも生ずる。

お年寄りによくある皮膚であるが、多くは亜鉛欠乏症である。

slide 07:亜鉛欠乏症の多彩な表皮

【記】

このスライドの諸病変は表皮より少し深層も含めてのものです。⑩は多剤服用による亜鉛欠乏症の皮膚症状例、⑫ ⑬は掌蹠膿疱症の小水疱と皮膚の肥厚ですが、大小、深さも種々の水疱の発症から、さらに剝皮、ビラン、膿瘍形成などと病変は発展しますし、皮膚の肥厚は掻痒、剥皮など伴い、発症の原因には種々の要因があるのでしょうが、総合的には皮膚の生成・維持の異常によると考えるのがよいのでしょう。

それぞれの水疱発症の一次的原因が単純に亜鉛欠乏によるものとは申しませんが、一次的+αなり、二次的な再生過程での亜鉛不足による代謝異常のことは事実と考えられ、これらの病変の大部分は亜鉛補充療法で容易に改善・治癒し、適切な維持により再発しにくくなります。

褥瘡発症に至る亜鉛の不足状態では、しばしば単発、多発の水疱の発症が認められ、しばしば熱傷による水疱などと誤診されます。繰り返す多発水疱では類天疱瘡との鑑別が問題となりますが、3~4の複数個程度の水疱はほとんど亜鉛欠乏による表皮病変としてよく、亜鉛補充療法に良く反応します。

⑪は表皮の菲薄化や水疱形成、剝皮、急性慢性皮疹の陳旧性の結果で落屑が多い状況ですが、長期間にわたる亜鉛の維持療法で驚くほど綺麗になることがあります。

slide 08:多剤服用患者の亜鉛欠乏:多彩な皮疹

【記】

大小種々の水疱はじめビラン、痂皮など複雑な亜鉛欠乏症の代表的な皮膚症状のひとつです。表皮内出血や表皮の剥離やズレなどは接着因子の問題か?

2013/08 DM、高血圧、高脂血症、認知症とのことで、コントロールは安定していると某大総合病院から紹介された、88歳の女性。

確かに、検査値はおおよそいわゆる基準値内に収まっているが、実に多種多量な薬剤が処方されていました。患者さんは身体中、掻爬痕だらけであり、四肢は慢性皮膚炎様の皮疹。『食欲はまああるが、体中痒いのが困る。こんな体中痒いのでは、長く生きていたくない』とのこと。09/14に Zn:48μg/dL で、2013/11/21より、取り敢えず亜鉛補充療法を開始。

その後、皮疹は新旧の水疱性皮疹、ビラン、痂皮、湿疹様皮疹混在し、掻痒含めて軽快と悪化を繰り返し、血清亜鉛値の変化もバラバラで、プロマックを2錠分1で投与、3錠分1で投与と処方を変更しても、Zn:60μg/dL~80μg/dLのあたりをウロウロと変動して、安定せず。

slide 09:多剤服用患者の亜鉛欠乏症の皮膚

【記】

2014/11より、最も不要なアトルバスタチンやアリセプトから、次々と不必要な薬剤を除去して、2015/02/09 水疱の発症なくなり、掻痒も治まりました。
2015/06/15 その後は、掻痒なく、皮膚もきれいで、食欲も良好です。

検査データは多少基準値を外れてもいるが、困ったことなく、2017/11 92歳で、死去されました。

その2014/04/03から2015/02/09、そして、2015/06/15の皮膚の写真経過です。

血清亜鉛値とアルカリホスファターゼの変動・推移は、

日付 2015/02/09 08/10 2016/02/10 05/10 10/25
Zn(μg/dL) 68 77 87 100 111
Al-P 241 215 302 324 346

と順調でした。

slide 10:種々の浅表層の褥瘡

【記】

褥瘡は、義足や拘縮などによる慢性的、過酷な加圧や圧迫による少数例外的なものを除いて、一時的圧迫は triggerではあっても、主要な褥瘡の発症・難治化の原因ではなく、殆んどは亜鉛欠乏による健常な皮膚の生成・維持の障害によるもので、代謝異常による皮膚の脆弱性が主要な原因である。

⑭は踵部の壊死の痂皮化が進展した褥瘡症例の同時期の臀部の初期褥瘡の表皮病変で、亜鉛欠乏症の種々の表皮病変が出現しています。この表皮病変は次のスライド11のごとくで、亜鉛補充療法で直ぐに軽快・治癒しました。

⑮は仙骨部下辺の2個の真皮のレベル程度の浅い潰瘍の褥瘡と右腰部の深部の圧痛のあるしこりで、既に、壊死となっている。壊死となった組織は生体にとって異物で、量が多ければ除去しなければ治癒しない。亜鉛補充療法をしつつ、周辺皮下組織の亜鉛不足状態の改善と感染状態が一段落したところで、デブリードメントして治癒しました。

⑯仙骨部の褥瘡瘢痕部に、低栄養、極度の亜鉛不足状態から発症した褥瘡。一般に瘢痕部の褥瘡は陳旧性だけに、比較的時間を要するが、亜鉛補充療法で、容易に治癒。

⑰殆んど終日寝ている状態の95歳の女性。仙骨部の突出部で、同じく褥瘡瘢痕部に発症した褥瘡であるが、次のスライド11の下段を参照されたい。

slide 11:亜鉛欠乏症の表皮病変

【記】

上段は⑭(スライド10)の腰部の表皮層の褥瘡病変。2015/04/11踵部の褥瘡悪化して受診。

同部は周辺感染を伴う黒化した大きな痂皮に覆われ、腰部にも写真のごとく浅い潰瘍の褥瘡を認められた。踵部は壊死の境界が固まってデブリードメント等など要したが、腰部はイソジンシュガーの局所軟膏療法と亜鉛補充療法で容易に軽快治癒した。

下段は⑰(スライド10)の褥瘡瘢痕部に発症が始まった褥瘡。昔、食欲不振や慢性湿疹、激しい掻痒症、表皮内出血、またその後は褥瘡の発症などでしばしば亜鉛補充療法を経験済みの方。

表皮、皮膚も菲薄化や介護時の表皮内出血や所々の表皮の剝皮もあり、亜鉛維持療法を継続していたこともあって、仙骨部の褥瘡瘢痕部の表皮下に大きな水疱形成をしたが、2015/12/18 水疱が破れても真皮以下に病変が及ばず、剥皮層は直ぐ乾いて上皮化し、2016/01/25 には、簡単に治癒した。

slide 12:低温熱傷と考えられていた下腿の潰瘍

【記】

認知症、高血圧、鉄欠乏性貧血等で特養に入所時に左下腿脛骨面に、一見低温熱傷を思わせる潰瘍病変が認められた。

褥瘡としては、慢性の圧迫を受けるような部位でなく、褥瘡として奇異な感じがしたので、2016/03/08血清亜鉛値の測定をしたところZn:62μg/dLとかなりの低値であることが判り、亜鉛欠乏による皮膚の脆弱性によるものとして、03/16 亜鉛補充療法を開始。低温熱傷としては遥かに短時間に簡単に治癒した。

食欲不振、皮膚掻痒症、菲薄化、表皮内出血も合併していた、亜鉛欠乏症であった。

slide 13:口周囲・他の病変

【記】

⑱爪は皮膚の延長であり、亜鉛不足による皮膚と同様に影響を受ける。

鉄欠乏性貧血におけるスプーン状爪の爪変形は昔から有名であるが、現在は亜鉛欠乏による爪の変形が多いのでないかと思う。しかし、多くの医師はそのことを知らないと言ってよい。

爪の変形には爪自体の硬度の低下と表皮に対する真皮の様に、爪には爪床の劣化があるようです。しかし、日常一般診療の現場では爪の硬さ、脆さをチェック、追及するのも良いようです。

総てではありませんが、亜鉛欠乏症の疑いのある場合、爪の硬さを検査してみるとフニャフニャしてること多く、亜鉛欠乏の可能性が高まります。

また、補充療法中にチェックしてみるのも意味があり、亜鉛が充足してくると硬度が変わってくるのが判ることもしばしばです。爪や口腔粘膜も、外胚葉系で同じような欠乏症状がありうるものと思われます。さらには、腸管粘膜もキッと影響があるものと思われる。

⑲私共の診療所では経験がないが、これまで唯一皮膚科教科書にも載る亜鉛欠乏症の腸性肢端皮膚炎には口周囲の皮膚炎などの記載があり、やはり、口周囲の皮膚炎や口唇炎も発症するが、亜鉛欠乏症として特徴的なものは、口角炎があります。

ただし、口角炎は口角の皮膚炎でなく、膠原繊維減少による口角の伸展不良による裂創の可能性がある。キッと他で報告する表皮だけでなく真皮、皮下組織の脆弱性による脊損症例の臀部の皮膚裂創重積と同様の機序によるものと考えています。

また、大部分のアフタ性口内炎は亜鉛欠乏によるものらしく、同疾患の、または他の症状での亜鉛補充療法で、早期に治癒し、次第に発症しなくなる傾向があります。

⑳さらにまた、歯科・口腔外科関連では、原因不明の難病とされている白斑症や口腔内扁平苔癬も、実は、亜鉛欠乏の口腔内粘膜の所見の可能性があります。

当・診療所のHPに詳細が載せてありますので、「再び、多数で多彩な亜鉛欠乏症~舌痛症②~」より、参照して見ていただきたい。

㉑2007年の症例であるが、上顎の違和感、口内炎、上顎歯肉の痛み、舌痛症、手掌や足底の掻痒、剥皮、紅斑、亀裂。背部の皮疹、食欲不振、体重減少等など、大学病院の診断が自律神経失調症と当時としてはばらばらの症状の舌痛に対する亜鉛補充療法の治療経過の纏めがある。

15年ほど後の現在、読み返してみるのも興味があるものと考え、以下に詳細を記す。

1927年生 女性
【初診日】 2007/04/17
【既往歴】 2007/01頃 上顎滲みるような変な感じ。耳鼻科、口内炎?デキサルチン処方
2007/02 上顎の歯肉に痛み、あちこち動く。歯科治療で治癒せず。耳鼻科
2007/02中旬 両手掌に掻痒、剥皮、紅斑。背部腹部に皮疹→皮膚科、信大皮膚科 薬疹??
2007/03末 足底の剥皮亀裂→汗疱でないか?
自律神経失調症と言われている。体重減47kg→40kg。不眠。
【現病歴】 2007/04/06 上顎歯茎が痛い。舌の尖が痛い、滲みる。→肉眼的所見無
Zn:65μg/dL
硫酸亜鉛処方され、舌痛不変だが、手掌の皮疹やや治まる。
口内ザラザラ。食欲、時間だから食べている。食べなければ!!(昨年暮れまでは偏食で美味しくないが普通には食べていた。
Tp:7.2 Alb:4.5 BUN:16.6 Cre:0.83 R:405 W4900
Zn:88μg/dL Al-p:169
プロマック錠投与開始。
2007/05/01 舌痛いくらか軽くなる。時々忘れる時あり。口内ザラザラ感軽くなる。食欲変わらず。
手掌の皮疹も同じ。
2007/05/08 TELにて連絡:舌口内は良いが、手掌の痛みも軽快。だが、口唇、上顎痛くて大変。
2007/06/04 上顎の痛み、滲みる感じ、口内乾く。口唇ぴりぴり。
舌痛は時にあるが殆ど良い。食欲出てくる。
手掌かなりよいが、もう少し。
Zn:78μg/dL Al-p:170
2007/07/10 舌尖の痛み少し良いが、食べる時痛む。口唇のぴりぴりあり。口内のザラザラは少し良い。
手掌かなり良い。皮膚の感じかなり良い。
Zn:100μg/dL Al-p155
2007/08/07 口内のザラザラまだあり。舌痛痛くない日、痛い日あり。
手掌、爪はかなり良い。
2007/09/11 口内のザラザラ感、可成り良くなる。舌の痛み時々あるが、無痛の時間長くなる。
2007/10/02 舌痛は食事時熱いもの辛いものであるが、普通はよい。口唇のぴりぴり感あり。
手掌の皮疹は少なくなって、剥皮無くなる。食欲少し増。
Zn:74μg/dL Al-p:197
2007/11/27 舌痛熱いもの、辛いもの気を付けているが、殆ど大丈夫。
2008/02/18 舌痛:熱いもの時に。口唇:痛み無し。口内ザラザラ感:無し。手掌、爪:可成りきれい。
2008/03/25 自律神経失調の症状あり、投薬を受けているが、舌痛、皮疹。食欲ほぼ良。
Zn:115μg/dL Al-p:185 TP:6.9 Alb:4.1
2008/08/18 少し痛いこともあるが、もう殆ど良い。普通の生活が出来る。
手掌、足底、口角は全く良い。
Zn:92 Al-p:189
2008/10/21 舌、熱いもの、辛いもの気になるが、普通に食べられ、問題なし。
口唇少しピリピリあり。手掌、足底全く良い。
治療を完了とする。

slide 14:亜鉛欠乏による爪の脆弱化・変形

【記】

2005年、熱傷で形成外科的治療を受けた。その頃より、右拇指の爪より始まり、左右の拇指,示指や中指などに変形が広がった。経過内で、表皮内出血、アフタ性口内炎、口角炎、下痢軟便の合併しばしばであった。

2006/03/20 爪の変形を主訴として、遠方より初診。鉄欠乏症等否定し、03/29より亜鉛補充療法開始。合併する症状は容易に治癒したり、再発しにくくなる。爪の変形は09月頃すっかり綺麗になり、2006/11/28、補充療法終了。その後、2009年、2011年にも、爪変形で再受診。

亜鉛欠乏時、爪の変形、硬度の減少、脆弱化がしばしば認められる。爪の硬度のチェックとその追跡は亜鉛欠乏症の診断、充足の経過を簡単に知る良い指標である。

次回の「亜鉛欠乏が関与する皮膚疾患」も参照されたい。

 

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