地域のみなさまと共に

みまき温泉診療所 Mimaki Onsen Clinic

health-forum

健康フォーラム

亜鉛欠乏症と臨床

講演「再び 亜鉛欠乏症の臨床と疫学」

亜鉛欠乏症講演2016.Ver.2-01(50)《14700-1500》
第30回日本臨床内科医学会 モーニングセミナー

再び 亜鉛欠乏症の臨床と疫学
~亜鉛生物学の進歩に、14年の臨床と欠乏症疑い登録患者960名余を踏まえて~

このページは、「亜鉛欠乏症のホームページ」 の 「【動画】日本臨床内科医学会モーニングセミナー講演(2016年10月9日)」の音声をスライド+文字に起こした物です。
(スライド№9と№10は1枚にまとめてあります)

目次

slide 01:再び 亜鉛欠乏症の臨床と疫学

皆さん、お早うございます。本日はこの様な題でお話ししますが、この話、もしかすると、多くの先生方にとって、まだまだ、目新しい話なのかも知れません。

しかし、10年前、2006年9月。東京で開催されましたタ第2回本医学会総会ランチョンセミナーで『亜鉛欠乏症についてー亜鉛欠乏症の臨床及び住民の血清亜鉛濃度の実態-』と題して講演し、その要旨は同年11月の『医学界新聞』に掲載されています。

亜鉛は、生命に必須のミネラルで、疾病の治療は勿論、その欠乏は、国民の健康に関わる重大な問題と考え、この十余年、講演や学会、論文、文書、HP等々で、その周知に努力して参りました。

slide 02:2002年秋、気が付いたこと

さて、2002年秋。私は、『多くの医師が考えているよりも、遙かに多くの亜鉛欠乏症患者さんがいる。』ことに、気が付きました。

診療の後に『先生。歳をとるとは、つまらねーもんだな。飯が、ちっとも美味くねー。』とか、『仕方ないから、食べている。』とか愚痴る患者さんが意外に多いこと、気になっていました。

slide 03:褥瘡、食欲不振、胃瘻の症例01

そんな時、この精神発達遅延の患者さんに出合いました。

褥瘡の治療で、半年程入院の間に、食欲不振から経管 栄養となり、更に、拒食となって、胃瘻を造設され、2002年08月、私共の施設に紹介されて来た方です。

slide 04:褥瘡、食欲不振、胃瘻の症例02

入所時。意識のある植物人間状態とでも申しますか、全介助状態で胃瘻栄養でした。意思の疎通、殆ど不可能で 食事の介助にも、頑として口を開かず。難治の仙骨部褥瘡があり、頻回の体位交換や種々の 局所的療法でも、変化がありませんでした。

何故?拒食なのか!!フッと、味覚障害ではないか?と考え、血清亜鉛値の測定をしたところ、42μg/dLでした。SRLのいわゆる基準値は、65~110μg/dLですから、これは明らかに、亜鉛欠乏による味覚障害であると考えて、亜鉛含有の胃薬:プロマックで、亜鉛補充療法を開始。

あっと言う間に難治の褥瘡が治癒。食事もドンドン食べる様になり、11月には、胃瘻も不要となり、抜去しました。翌年には、元気度も改善し、簡単な会話も可能となりました。

血清亜鉛値の変化は、42→54→45→50→56→67μg/dLでした。この血清亜鉛値の動きを、チョット、頭に止めておいて下さい。42→54→45→50→56 です。

後から考えると、この症例、亜鉛欠乏による味覚障害ではなく、亜鉛欠乏による食欲不振からの拒食で、食欲不振、褥瘡、元気さの低下、精神状態が亜鉛欠乏との関係を示す衝撃的な症例でした。

私にとって、大変幸運だったことは、この患者さんとの意思の疎通が難しかったことです。もしも、『食欲がない』と訴えられていたら、多くの 病院の医師達と同じく、内視鏡や多くの検査をして、原因不明の食欲不振と診断をし、亜鉛欠乏とは気が付かず、今日ここで話をしている事もなかったのかも知れません。

slide 05:食欲不振、褥瘡、元気度の低下の症例01

症例1と、ほぼ同時進行の症例です。

私の赴任する一年前の1999年8月より、後から振り返ると、 典型的な亜鉛欠乏症~症状の繰り返す食欲低下、浮腫、痴呆様症状、ADLの低下、口内炎の発症等々で、しばしば、エンシュア・リキッドを投与され、軽快していた方です。

このエンシュア・リキッド、意外な意味があったのですが、お判りでしょうか??。

slide 06:食欲不振、褥瘡、元気度の低下の症例02

2002年2月、左足関節 外顆部に褥瘡が発症。家族の丁重な介護や局所の治療にもかかわらず、治癒せずに悪化。

半年後の8月、食欲不振が進行し。 さらに、仙骨部、左大転子部にも、新たに褥瘡が発症。

9月には、食べるのを嫌って、食事には顔を背けて、食べない、と言う拒食状態となりました。やはり、味覚障害か?と血清亜鉛値を測定。56μg/dLでした。

褥瘡はどんどん悪化し、皮下脂肪層に大きくえぐれて、トンネル状となりました。89歳。半年以上続く褥瘡に、新たな褥瘡も加わり更に悪化。食欲全くなく、食事には顔を背け、食べず、動けず、傾眠傾向。

9月30日。往診で『もう寿命です』と宣言しました。

slide 07:食欲不振、褥瘡、元気度の低下の症例03

しかし、血清亜鉛値56μg/dLで、亜鉛欠乏はあるので、試みに、プロマックを投与。

約2週後の往診で、本当に驚きました!!食欲が劇的に回復しているのです。1例目のこともあり、褥瘡は?と見て、やや軽快か? 欲目か?とカルテに記載しています。

3週間後、元気が出て、褥瘡には、肉芽が出て来て、2ヶ月後には、食欲良好で、褥瘡、 殆ど治癒。

slide 08:食欲不振、褥瘡、元気度の低下の症例04

翌年3月。普通食を食し。ADLは向上。褥瘡無し。私は、これで治療は完了と考えました。

しかし、6月、元気で食欲は良好なのですが、仙骨部に褥瘡が再び発症。血清亜鉛値53μg/dL。プロマックの再投与で、簡単に治癒。

鉄欠乏性貧血での鉄補充療法と同様の考え方。『亜鉛にも蓄積』が必要と気付かされた症例でした。その後は、プロマックのみ、継続投与して、2年後。91歳。普通食食し。褥瘡無く、お元気です。

ここで、褥瘡の治癒経過の写真。お見せできれば講演としては、最高なのでしょうが、もう、今にも、死にそうの時でしたし、それに、その時は『まさか褥瘡が治る』とは思ってもいませんでしたので、臨床医としては、とてもとても 写真撮影は無理した。

slide 09:写真01/02

(左側)寿命宣言2年後の写真です。

(右側)3年後の写真です。

4年後もお元気で、その後、褥瘡の発症無く家族も驚いたが治療している私が一番驚いた症例です。

個人情報保護法がありますが、ご家族も、ご本人にも 承諾済みの写真です。

slide 11:食欲不振、うつ、下痢、舌痛症例01

多剤服用の患者さんです。

1999年1月から、やはり、後で考えると、典型的な亜鉛欠乏症状の食欲不振、うつ様の精神症状、ADLの低下続く、原因不明の下痢等々で、2度も入院して、ありと、あらゆる検査 をして異常が発見されなかったケースです。

slide 12:食欲不振、うつ、下痢、舌痛症例02

2000年5月、口内が苦いと、歯科受診。治療を受けるも効果無く、7月、舌が辛くて、痛くて、食事がとれない、食欲がない、舌の先が痛い。口や舌が気持ち悪い、歯がおかしい等々と訴えるが、往診で、舌や口腔内には肉眼的異常所見を認めず。

『今日の治療指針』に従い、ありと、あらゆる治療を 試みたが、全く効果は認められませんでした。

slide 13:食欲不振、うつ、下痢、舌痛症例03

その後、2年余にもわたり、毎月2回の往診の度に、舌をベロベロ、ベロと動かして痛みを訴えられるが、何の有効な対応も出来ず。往診が大変、苦痛になりました。

2002年10月。舌痛の他に、食欲不振もあり、多彩な愁訴もあるので、舌痛も、もしかして??と亜鉛値を測定。55μg/dL。早速、プロマックを投与。

2週後の往診時、『舌は最近痛くなくなった』と言うのです。エエッ!まさか、、、?!

舌痛は、後でも述べますが、普通はこれ程短期間には 軽快しないことが多いのですが、これ又、患者さんに とっても、私共にとっても、大変に幸運なことでした。

slide 14:食欲不振、うつ、下痢、舌痛症例04

数年にわたる舌痛で、ベロベロの癖はしばらくは残りましたが、食欲も出、元気にもなり、2004年3月。ご機嫌良く、明るく、元気。舌痛の事は、もうすっかり忘れ、投薬も少量となりました。

“亜鉛欠乏症と言えば味覚障害”という一般的な知識からスタートして、患者さんをよ-く観察していると芋蔓式に次々と、実に、多彩な亜鉛欠乏症を知ることが出来ました。

slide 15:文献的亜鉛欠乏症の症状

さて、1961年、プラサドが”ヒトの亜鉛欠乏症の存在”を示唆する論文を出して、約半世紀余が過ぎました。この間に文献的には、動物実験結果をも含め、個々にこの様に多彩な亜鉛欠乏症の症状が報告されています。

この中で”味覚障害”については、日大耳鼻咽喉科教授であった(故)冨田寛先生のお仕事で”亜鉛欠乏症と言えば味覚障害。味覚障害と言えば、亜鉛欠乏症”とよく知られていますが、私もそうでしたが、日本の医師で、『これ程、多彩な 欠乏症状がある』と実感を持って、知っている医師は殆ど居ないと言っても、過言ではありません。

更に、この飽食の時代に、余程特殊な場合を除いては、 体内にほんの数グラムの微量元素亜鉛の欠乏症が、存在するとは『常識的に考えられない』と言うのが、一般的常識でしたし、今も常識です。

slide 16:我々の経験した亜鉛欠乏症

われわれの経験した亜鉛欠乏症の症状です。味覚障害は勿論ですが、その他に、彩色字のごとく、実に多彩な欠乏症状を経験しました。

大きな字の褥瘡や食欲不振、舌痛を含む舌・口腔咽頭症状はしばしば遭遇し、慢性の下痢や貧血も有ります。多くの症例で、亜鉛補充療法で、元気度が回復し、実に多数の、多彩な症例を、この十余年で経験しました。

亜鉛の生体内の働きからすれば、まだまだ、 多くの、 未知の症状がある筈と考えていますが、難治性皮膚疾患や自己免疫とされている疾患にも、掻痒症等、高齢者に極々ありふれた皮膚症状などにも亜鉛欠乏が主要な原因であると予測される、そんな症例が増えつつあります。

slide 17:亜鉛の生体内での働き

人体にたった2~3g含まれると言う亜鉛で、何故、これほど多彩な欠乏-症状が生ずるのか?

黄色い字で示すごとく、亜鉛は生体にとって、大変に重要なポイントに働いています。特に、多くの酵素の活性ポイントに亜鉛原子一個が入るとその活性が数千倍にも高まるとも言われています。

また、細胞内外で、シグナル因子として、重要な情報伝達の機能を果たしていることも、判ってきました。

slide 18:亜鉛酵素

その亜鉛酵素が1,000種近くもあるとのことですが、中には、この様な重要な酵素があります。この中で、臨床でしばしば測定されるのは Al-Pで、これが 亜鉛欠乏症の診断に有用な事も判ってきました。

slide 19:地域住民の血清亜鉛濃度調査

KITAMIMAKI Study

患者さん多発のもとに、地域住民に亜鉛不足の傾向が予測され、2003年秋、北御牧村の1,431名の調査及び、総計4,000名に及ぶ長野県下での三調査をしました。

slide 20:血清亜鉛値の分布図と回帰曲線

このKITAMIMAKI Studyは、医学界新聞は勿論、多くの成書に掲載され、詳細は省きますが、青は午前の、白は午後の採血群です。

午前群に比して午後の群がより低値に分布しており、血清亜鉛値に日内変動があることが予測され、午前から午後にかけ、約20μg/dl程低下します。

参考:血清亜鉛値の時間による変動(ヘルス受診者751名)

slide 21:住民と亜鉛値

住民の亜鉛不足傾向の存在を証明するのには、午後採血の低値群等を除かねばなりません。

午後採血群を除いた、午前群の分布図、回帰曲線です。比較として、これまで基準値とされている血清亜鉛値の110μg/dLと65μg/dLを上下の赤線で示しました。

この基準値はSRLが原子吸光法で血清亜鉛値の測定を始めた1980年代の初頭に、健康成人167名より定めたものです。

小中学生はおよそ基準値内に分布していますが成人の群は基準値の低値域に分布する傾向にあり、回帰曲線も右肩下がりです。

成人でも、超高齢群は、より低値に分布する傾向ですので、比較をするのにはこの群の削除も必要ですね。

また若人層でも存在しますが、基準値の最低値65μg/dL(下の赤線)を下まわる例が加齢と共に、増加していることもお判りでしょう。 

slide 22:村民の血清亜鉛値と基準値

当村一般成人341名(平均年齢54.8歳)の血清亜鉛の平均値は78.9±11.6μg/dLで、基準値の平均値87.5±11.2μg/dLよりも、約10μg/dL低値でした。

当村の成人の約20%が、基準値の最低値65μg/dLを下まわりました。

slide 23:NHANESⅡについて

一般市民を対象にした血清亜鉛濃度の調査は、1976年から1980年にかけてアメリカで我々のちょうど10倍の14,700名の調査があり、SRLの血清亜鉛値の基準値は、ほぼこのNHANESⅡにも準拠するものとも言え、我々の調査はその約25年後に広く各年齢層にわたる一般地域住民を対象にした世界で初めての調査でした。

この25年間に ”何が生じた” のか?大変に重大な問題であると、私は考えています。何が変化したのか?

私は食物、畜産農業、それに、食品添加物に問題ありと睨んでいますが!どうでしょう。

slide 24:亜鉛欠乏症の臨床(数)

さて、亜鉛欠乏症の臨床はまだまだ、判らない事だらけですが、私共は、2002年の第一例から、亜鉛欠乏症疑い患者をエクセルで登録・管理し、追跡しています。

疑い患者には、勿論、非亜鉛欠乏症や非治療の患者も含まれますが、10数年余にわたり、再三再四発症して追跡されている症例も、数多く、これらの多くの症例を踏まえて、亜鉛欠乏症の臨床についてお話ししましょう。なお、今年8月末での登録患者数は994名を数えています。

slide 25:亜鉛補充療法の効果発現

多彩な亜鉛欠乏症は欠乏症ですから、その大多数は、簡単で、安価な亜鉛補充療法で容易に軽快・治癒しますが、その効果発現の時期は症状-疾患により異なり、極々短期のものから、長期間を要するものまでがあります。

食欲不振は多くは、数日から1、2週程度の極短期で、食欲は回復し、中には、翌日にも回復する症例もありその効果の発現は劇的です。

しかしまた、中長期的にも、食欲は回復・安定します。発症機序に違いがあるのでしょう。

味覚障害では数週から1ヶ月程度のこともある様ですが、より長期間を要し、やや、難治の傾向があり、中には、回復不可能なこともある様で、食欲不振とは、また、発症機序が異なります。

slide 26:舌痛症の効果発現 01

発症原因に諸説のある舌痛症は大部分が亜鉛欠乏症で、時に、舌痛のみの単独の発症もありますが、多くは口腔内違和感や他の亜鉛欠乏症状をも伴い発症し、多くの舌痛症は4ヶ月から半年前後で治癒します。

slide 27:舌痛症の効果の発現 02

しかし、2013年、口腔外科学会の講演時の纏めでは、短期と少数ですが年余の長期を要する二群に分かれこの傾向につき最近気が付いたことがあり、後述します。

slide 28:多彩な皮膚疾患.皮膚症状

また、亜鉛欠乏により、多彩な皮膚疾患・皮膚症状が発症します。

皮膚科教科書にも載る亜鉛トランスポータZIP4の発現異常による腸性肢端皮膚炎は、私には経験がありませんが、ここに上げるその他の皮膚疾患・皮膚症状は一次的か、二次的かは別として、主に亜鉛補充療法で軽快・治癒の可能性が高く、皆、経験したものです。

アフタ性口内炎も口角炎も、ほぼ、亜鉛欠乏症です。

尋常性乾癬は亜鉛補充のみで、劇的に反応する症例と充分反応しない症例があり、まだ、検討が必要です。

いわゆる老人性掻痒症の多くは劇的に軽快しますが、少数、より掻痒が憎悪するものがあり、どんな機序なのか?? 皮膚科医の研究を、是非、是非お願いしたいと思います。

アトピー性皮膚炎も、名古屋の皮膚科医有沢祥子先生は多くの症例をお持ちです。亜鉛欠乏のみでは、ないのでしょうが、亜鉛不足が、大きく絡んでいることは間違いのない事実です。

私共は、一般の診療所ですから皮膚科症例は多くはなく、十二分の検討が出来ません。しかし、これらの事実は、皮膚科のステロイド治療の現状を一変する可能性があり、是非、是非、皮膚科医の関心と検討を願う者です!!

slide 29:膿疱性乾癬??01

1995年頃より、両手掌に皮疹が発症。徐々に、皮疹は前腕へと拡がり、2005年秋より、全身の慢性の皮疹に、口角炎、舌痛や食欲不振等などの亜鉛欠乏症状を併せ持つ方です。

slide 30:膿疱性乾癬??02

数字は年月日を示しています。

口唇、口周囲の皮疹、左口角炎に舌痛、両手掌・手背から前腕の皮疹です。

slide 31:膿疱性乾癬??03

背部、腰部の皮疹で、勿論、両大腿・下腿にも同様の皮疹があり、全くお気の毒です。

slide 32:膿疱性乾癬??04

2006.01.04.から2006.02.21.の約7週間の背部の経過です。

slide 33:膿疱性乾癬??05

同じく、7週間の手掌の変化です。紆余曲折はあったが、九ヶ月で、治癒しました。

亜鉛欠乏症のHP“に詳細は載せてあります

slide 34:類天疱瘡様皮膚疹01

類天疱瘡様皮膚疹が劇的に治癒した初期の症例です。

2003年1月、左足背に水疱とビランが多発し、受診。水疱形成とビランは軽快と増悪を繰り返し、難治のために皮膚科に紹介するも、水疱が続き、一向に軽快せず。

2005.01.11. 心不全と両下腿に水疱が多発して、再診。Zn:64μg/dL。
2005.01.18. 水疱症で、血清亜鉛値が64と低値の方なので、もしかして、これも亜鉛不足か??、と亜鉛補充療法を開始。

この症例もまさか亜鉛不足と思わず、再診時の写真無しです。

2005.02.08. ビランはよくなり、『新しい水疱出来ない』と云う。慌てて写真を撮影。中央の写真です。

2005.03.15、Zn:77μg/dLです。

slide 35:類天疱瘡様皮疹02

2005.07.26. 類天疱瘡様皮疹は、ほぼ治癒。Zn:115μg/dL、あれほど、頑固に続いた皮疹は、その後発症しません。爪も綺麗になりました。

slide 36:掌蹠膿疱症症例

1995年以来、繰り返し発症して居た掌蹠膿疱症です。2006年1月かなり酷い状態で、 Zn:64μg/dL。

亜鉛補充療法3週間の経過ですが、如何でしょうか?以後、亜鉛補充を継続し8年余、再発しません。

slide 37:高齢者の脆弱な皮膚

高齢者では、よく皮膚が、特に、下腿の皮膚が、容易にペロリと薄く剥皮する人を、しばしば、経験します。

この症例も、何年にも渡って、剥皮や浅い表皮内出血、水疱、ビラン、爪、爪の変化をも繰り返してきた方です。亜鉛値:53→72→94→96μg/dLです。

若者の皮膚とは行かぬまでも、爪も再生して、すっかり綺麗になりました。

slide 38:褥瘡(褥創)

さて、”大部分の褥瘡の主要因は亜鉛欠乏による” と言って良いと考えます。

早期の褥瘡は1~数週で、重症の褥瘡では、3ヶ月前後を要します。亜鉛補充療法と適切な局所療法で治癒します。少なくとも、現在の複雑な軟膏療法は不要です。

slide 39:褥瘡例治癒経過写真01

写真左側上下

2005.04.11.ショートステイ時。左踵部と臀部の褥瘡を認められ、受診。臀部は発赤、水疱、表皮内出血など表皮病変に注意。同日。亜鉛補充療法開始。局所はイソジンシュガーのみです。

中央上下

2005.04.19. 臀部の表皮の褥瘡は殆ど軽快ですね。

右側上下

2005.05.09. 踵部も痂皮が締まって。 Zn:78μg/dL です。

slide 40:褥瘡例治癒経過写真02

同05.09. デブリ。→下に、ピンぼけですが、5.23.→05.30. 褥瘡かなり縮小。ここでショート・ステイを退所。在宅療養となり、06月中旬:写真なしですが治癒したとのことです。

写真中央上下

09.07.再び、ショート入所時。 Zn:111μg/dLです。翌2006.01.25.再発なく。プロマックの投与中止。

右側上下

同.11.15 再発もなく、踵も、臀部も綺麗ですが、Zn:65μg/dL と低下。再発予防目的でプロマックの投与を開始。そして、その後も、再発しません。血清亜鉛値とAl-p値 の典型的な動き、後で述べます。

患者は『本当に良かった。もう駄目かと思っていた。』とのことです。

slide 41:慢性的長期難治の褥瘡潰瘍01

6年余にわたり寝たきり状態。病院、施設を転々としていた、いや、転々と回されていた 患者さんです。数年来、いかなる局所療法でも、大変高価なスプレーでも、軟膏でも、褥瘡全く治癒せず、と家族が言います。

2005.08.30 亜鉛補充療法開始。

slide 42:慢性的長期難治の褥瘡潰瘍02

2005.10.24. 治癒しました。『百聞は一見にしかず』です。

slide 43:難治褥瘡症例の検討

しかし、当然、少数例外的でも亜鉛欠乏が主要因でない”褥そう”が ありうると考えています。


:死直前の褥瘡、介護拒否で糞尿まみれは駄目ですね
:極端な低栄養例?糖尿病例?
:背損例?進行した感染例はどうでしょうか?

その条件は何か?を追求して来ました。

slide 44:糖尿病症例

さて、その糖尿病症例です。認知症で食事コントロールできず、HbA1cが2005年9月:6.9 → 2007年1月:12.0と、どんどん悪化する中で発症した褥瘡です。

2006.10.10. Zn:63μg/dl で、亜鉛補充療法開始。

2006.12.05 Zn:98 →12.26.に、二ヶ月余で治癒しました。

slide 45:脊髄損傷症例

1997年1月発症の脊髄損傷症例です。数年後、身体諸処に類天疱瘡様又は類似の水疱やビランが多発。この水疱は後カラ考え亜鉛欠乏症の水疱ですが、知覚がないための熱傷と間違えられていました。

2001年7月より、車椅子、自動車等に移乗時に、痛みがないので、ザクザクとした裂創が臀部に多発。この様な裂創が約6年間も繰り返し、繰り返し生じ、 褥瘡様となった方で、いわゆる褥瘡ではありません。

2007.04.02より、プロマックを開始。その経過です。Zn:57→88→72→90→101μg/dlです。皮膚の菲薄・脆弱化が原因で、後ほど述べます。

slide 46:感染(膿瘍形成)症例01

膿瘍形成症例です。

2007年10月、広範な発赤とドブドブとした波動を触知。大きな切開口を開け、大量の膿の排出と生食による洗滌。菌血症予防に2日間だけ、抗生物質の投与をしました。

slide 47:感染(膿瘍形成)症例02

その経過です。ポケットになりましたが、問題になりません。

slide 48:褥瘡の治療

これまでは、褥瘡の発症.難治の主要因は、局所組織の圧迫による循環障害とされ、除圧と創傷治癒阻害因子の除去に、褥瘡治療の主力が注がれてきました。

また、これまでは、低栄養状態の示標である総蛋白やAlb値、Hb値の改善などに注意が注がれて来ました。

食事療法による低栄養状態の改善は、大切ですが、現実には、そう容易なことではありません。

slide 49:全身療法と局所療法

しかし、亜鉛補充により、諸酵素の活性など代謝状態が改善されれば、低代謝状態の結果であった総蛋白やAlb値、Hb値の改善は無くとも、褥瘡は治って行きます。

これまでの局所療法は非健常な皮膚をソッと保護し、治癒を期待するもので、亜鉛補充療法は代謝を正常化し、健常な皮膚の生成・維持に転換し、褥瘡が治り、再発が予防されるものです。

slide 50:NHKためしてガッテン症例01

NHKのためしてガッテンに出た症例で左上の写真のみが放映されました。一体、亜鉛欠乏症の何が伝えられたのでしょうか??

それはさて置き、96歳、低栄養、在宅医療の方。典型的褥瘡なので、初診時2012.05.07より、亜鉛補充療法を開始。

2012.05.28の写真。右下の仙骨部の浅い褥瘡はほぼ治癒ですね。しかし、左上の腰部の深部壊死巢に感染が生じ、進展。

2012.06.16切開排膿。膿と壊死物質を除去すると、真皮や皮下組織の結合組識はしっかりしていて、左下、切開2日後の2012.06.18には、褥瘡の縁は乾き締まっています。

slide 51:ためしてガッテン症例02

在宅介護で褥瘡はどんどん収縮。2012.09.19には治癒しました。

slide 52:臨床所見と分子生物学的証明

亜鉛一元素の欠乏が、一見、全く関係なさそうな褥瘡や舌痛症の原因と主張すると、 医師、特に、いわゆる専門医達は『そんな馬鹿なこと!!』と言います。

2008年。『亜鉛トランスポータZIP13のノックアウトマウスを作成し、骨・歯・皮膚等の結合組織の発生・維持に関わる亜鉛の関与の一端を分子生物学的に示した』理化学研究所の深田俊幸先生等の論文が発表されました。

slide 53:深田論文

左上のA図で、下段のKOマウスの皮膚は、上段のWTのマウスの皮膚に比して、顕著に薄く、青の四角1)で囲った、それぞれの表皮層では特別の差はないが、アザン染色で膠原繊維が減少しています。

B図、D図で、KOマウスでは、皮膚の脆弱さが示されています。

C図では、線維芽細胞の形態異常が認められ、線維芽細胞 の機能異常が推測されます。

私共が、褥瘡の発症・治癒に亜鉛が主に関与していることを主張してきましたが、その臨床経過の一部を見事に分子生物学的に説明しています。

slide 54:低介護、低栄養、感染の褥瘡

ほぼ、独居状態、在宅の患者。低介護、低栄養状態で、5月末には、身体諸処に、水疱や褥瘡が多発。

6月末に、 右大転子部の褥瘡が感染も伴って、急速に悪化、 深く筋膜層にまで達した同部の経過です。

真皮や皮下の結合組織がギュッと締まって、治癒して行く様がお判りでしょう。総蛋白、Alb値、Hb値は殆ど変化・改善なしです。

slide 55:真皮皮下組織の脆弱に因る裂創

以前に出た脊損症例です。同じく、真皮、皮下組織の脆弱さが原因で、裂創が重積したもの。いわゆる褥瘡ではありません。

同じく、口角炎は口角の皮膚炎ではなく、口角の真皮・皮下組織の伸展性の減弱による開口時の裂創であり、亜鉛欠乏症の初期からしばしば発症する典型的な亜鉛欠乏―症状です。

肛門潰瘍(切れ痔)も同機序の可能性が推測されます。

slide 56:褥瘡予防 01

褥瘡が亜鉛補充療法で容易に治癒することが判りました。しかし、発症すれば患者の負担は大きく、予防が大切です。

表皮内出血や外力による易発赤性、類天疱瘡様の水疱、剥皮、表皮の菲薄化は表皮の典型的な亜鉛欠乏症状でこの状況から論理的亜鉛補充療法を開始することで、褥瘡予防も可能です。

slide 57:皮膚と亜鉛

亜鉛トランスポータ、ZIP4やZIP10、ZIP13の機能の解明から皮膚の生成・維持等に、亜鉛が重要な役割を果たしていることが判ってきました。

表皮の菲薄化や易発赤性、表皮内出血や水疱形成に、剥皮等などの表皮の異常は、表皮を支える土台である真皮・皮下組織の生成・維持の異常の関与もありますが、臨床の経過から、表皮細胞層の生成・維持へは、真皮や皮下組織でのZIP13とは別系統の亜鉛の関与があるものと私は予測していました。

最近、ZIP10のKOマウスの表皮はペラペラと菲薄で、表皮細胞の角化に異常もあることが判りました。また、接着因子等への亜鉛の関与もある筈です。

slide 58:褥瘡発症の循環不全の仮説

褥瘡の発症・進展と治癒経過とを臨床的に詳細に検討すると仮説ですが、褥瘡の発症の原因の血行障害は、勿論、組織の圧迫が関係はしますが、それはtriggerで、糖尿病の壊疽と同様に亜鉛欠乏による血管内皮細胞の機能不全が関与していると考えると、臨床での現象が素直に説明されると考えますが、是非、研究を深めて欲しいものと思っています。

slide 59:大部分の舌痛症は亜鉛欠乏症である

2013年、亜鉛欠乏症疑い登録患者数が800名となり、そのデータをもとに、日本口腔外科学会で講演をした舌痛症例のまとめです。HPに総てのデータは載せてあり、詳細は省きますが少数の例外を除いて、発症原因に諸説ある大部分の ”いわゆる舌痛症” は亜鉛欠乏症と言えます。

slide 60:野崎千尋論文 01

2011年7月、ZnイオンのNMDA受容体の活性抑制機序について、野崎千尋論文が発表されました。

slide 61:野崎千尋論文 02

NMDA受容体のZnイオンの結合部をKOしたマウスでは、Znイオンの鎮痛効果が低下し、疼痛感受性の亢進、慢性疼痛の増強があるとの論文です。この論文からは、舌痛症と亜鉛の関係のみならずリュウマチや筋痛症のことも頭に置くべきか?

舌痛症は、新聞紙上の医療相談欄で、歯科や口腔外科の教授達がしばしば『気の持ち方』等と答えています。多くの患者さん、『気の持ち方』にされては、大変に、お気の毒です。

slide 62:亜鉛欠乏症の診断

さて、亜鉛欠乏症の診断ですが!!まず、臨床症状より疑い、亜鉛値等の値・推移を含め、診断と治療を進めます。

slide 63:亜鉛補充療法

私は原則として、この様に治療していますが、原則の治療法では、効果がくすぶり、血清亜鉛値もあまり変化しない症例が、中には存在します。

そんな時、総投与量を変えずに2錠/1日1回投与で、効果が出現し、血清亜鉛値も変化することがあり、更に、3錠/1日1回投与が必要なこともあります。

slide 64:血清亜鉛値の推移とAl-P値の変動のシェーマ

さて、亜鉛補充療法時の血清亜鉛値の変動・推移は上図のごとくですが、欠乏症での血清亜鉛値の典型的動きは補充療法初期1ヶ月前後で、殆どの例で極端に上昇し、その後、初期値付近にまで低下して、以後、徐々に徐々に上昇し、そして、凡そ平衡に達します。

血清Al-P値の変動は、多くは下図のごとくですが、典型的な動きをしない症例もあり、症状・疾患にもよる様で、まだ解明不足で検討が必要です。

更に最近、原則的補充療法では、くすぶる難治症例の群に多薬剤服用者が多い傾向に気が付きました。後でまとめて述べましょう

slide 65:スクリーニング法

さて、実に多くの多彩な欠乏症が存在する事お判りでしょう。亜鉛欠乏症の診断は、まず疑ってみることです!!簡単なスクリーニング法は、現在はまずこの6点です。

原因のない食欲不振、まず亜鉛欠乏を頭に置くべきです。入院患者では、食べないからと、安易に胃瘻を造設しないで欲しい。

内視鏡的胃瘻造設術:簡単に出来る事、大変に困ったことです。のどの渇きのない時に、飲め飲めと勧められるビール、食欲がないのに、食え食えと勧められる食事、辛いですね!!

いわんや、拒否も出来ず無理に食物を詰め込まれる辛さを、我々は自分自身のこととして考えるべきです。現在、病院で、”食べないから”と簡単に造設された胃瘻の大部分は、亜鉛欠乏症と言って、過言ではありません!!

臨床の現場でよ~く観察していると、可成りの麻痺のある人でも、 最後まで残るのは、食の自立です。『ヒトは食欲があれば食べる』のです。

slide 66:何故?気が付かなかったのか?

多発する欠乏症。何故気が付カナかったのでしょうか??

①は判りますよね!! でも、最も問題なのは、

②の医師の『基準値が正常値』と言うデジタル思考です。

slide 67:欠乏症、血清亜鉛値は低値?

多くの医師は欠乏症であるから血清亜鉛値は低値である!とうっかり考えています。医療の現場では統計的数値である群の基準値を今でも、うっかり、個の正常値と考えている傾向があります。

医師の中では『血清亜鉛値が基準値内であるから、亜鉛欠乏症ではない』と単純に否定する者が多数です。

slide 68:高血清亜鉛値味覚障害症例

口腔内が渋柿を食べた様と言う典型的味覚障害例ですが、初診時の血清亜鉛値は109μg/dLで、約半年のプロマック投与で、血清亜鉛値は 140μg/dLレベルに上昇し、治癒しています。つまり、基準値は個の正常値ではありません。

しかし、このことがこれほど多彩で多数の亜鉛欠乏症の存在を、否定してきた主要な原因の一つです。

では、これは自然法則から外れた事でしょうか??

slide 69:初診時血清亜鉛濃度分布図

2008年。亜鉛欠乏症疑い患者が500名を越えた時、亜鉛補充療法有効著効例で、且つ、データの揃った亜鉛欠乏症確診例 257例の初時血清亜鉛濃度の分布図です。

いわゆる基準値の最低値 65μg/dL(グリーンの縦線)より高値(右側)に、113名44%もの欠乏症例を認めています。

この257名の血清亜鉛濃度のヒストグラムから、Kolmogorov-Smironovの正規性の検定  .091 で、亜鉛欠乏症患者の62.3μg/dL±13.1の正規分布曲線が描けます。

slide 70:非欠乏群と欠乏症群の基準値

SRLの基準値制定時の集団を一応亜鉛非欠乏者集団と見なすと、赤の87.5μg/dL±11.2の正規分布曲線Aが 描けます。

つまり、赤の矢印 65から110μg/dL の間に統計的に非欠乏者の95%が分布することとなり、同様に、青の亜鉛欠乏症患者の曲線Bより、青の矢印の 36~89μg/dL が欠乏症患者の基準値ですから、それぞれの群の基準値は、黄色の矢印 65~89μg/dL の間で、多くが混じりあい、±3σでは、もっと広範囲で重なります。

更に、両曲線の平均値の差はグリーンの矢印のごとくで、平均値で25μg/dLほど血清亜鉛値が低下する状態で、欠乏症状が顕在化すると言っても良いのかも知れません。

つまり、至適血清亜鉛濃度が140μg/dLの人では、109μg/dLに血清亜鉛値が低下する状態は立派な亜鉛欠乏症でありうるのです。

このことは他の多くの臨床検査値にも言えることで、医療でのデジタル思考の蔓延は、大変憂慮すべき事です。

slide 71:血清亜鉛値80μg/dl意味するもの

図はHPにもあり、後ほど検討してみて下さい。説明は省きますが、亜鉛欠乏症類似の有症状例では、80μg/dLが欠乏症の可能性を判断する有力な目安となります。

しかし、老婆心ながら、症状のない一般検診では、この数値を 単純にあて嵌め、メタボ検診の愚を踏まないで欲しいと思います。

slide 72:血清亜鉛値測定の意味

何故?血清亜鉛値の測定が必要なのか、まとめると、この四点です。

血清亜鉛値の絶対値では欠乏症か否かは判らないが臨床症状と血清亜鉛値から、もし亜鉛欠乏症とすればその確率を推定することなど、血清亜鉛値を測定する論理的亜鉛補充療法では、多くの情報を掴みつつ、補充療法を進めます。

slide 73:何故、亜鉛不足が生ずるのか?

何故,亜鉛不足が生じるのか?? いろいろな原因が成書にも書かれています。 

それでも、私は主要な原因は食物・食糧と考えています。食は総ての国民に関わる重大な問題です。

しかし、・・・・・・・・・・・

slide 74:多剤服用患者の亜鉛欠乏症①

症例は、初診時88歳の女性です。

9種類もの投薬を受け『全身状態は安定している』と某大総合病院から紹介されました。確かに、一般の検査値はおよそ基準値内でしたが、初診時、『体中痒くて困る。何時までも生きていたくない。』とのこと。体中掻爬痕だらけでした。 

11月より、通常の亜鉛補充療法を開始しましたが、皮膚の状態は変動するものの、血清亜鉛値もくすぶり、

slide 75:多剤服用の皮膚疾患②

2014年4月には、皮疹・掻痒共に悪化。特に右下腿に大小の水疱、びらんなど複雑な皮疹が発症・継続し、また、血清亜鉛値も予測した変動を示さず。投与法の変更や増量など、処方の変更も加えたが、症状や血清亜鉛値の変動がくすぶり続けたので、

2014年11月より、最も問題で、且つ不要なリピトールから、徐々に、不要な薬剤を除いて、2015年6月、皮疹や掻痒等の皮膚症状はすっかり治癒。

血清亜鉛値の変化も、予測通りの変化となり、2016.05.10にZn:100μg/dLまでになりました。

slide 76:多剤服用の皮膚疾患③

2014年4月と2015年6月の写真です。現在は、食欲も良く、全くお元気です。

最近、この様に間違いなく亜鉛欠乏症と考えられるが亜鉛補充療法の効果がくすぶり、検査値もくすぶる、難治性の症例について、特に、舌痛や口腔内違和感、掻痒症や難治の皮膚疾患の様な原因が定かでない症状・疾病で、しばしば、特定な薬剤の処方があること、特に、多薬剤服用例が目立つことに気付きました。

slide 77:最後に

亜鉛は多彩な生体内機能を有する生命に必須な元素です。しかし、微量で、且つ貯蔵能が小さな亜鉛は、 また、キレート作用、イオンの競合やPHによる腸管からの吸収障害に利尿剤による排泄の増等々、また、体内で、化学合成物質とのキレート作用等々も含め、欠乏症を生じやすい元素と言えます。

亜鉛の吸収や効果を阻害する薬剤は、多数存在し、多剤処方の傾向と合わせ現代の医原病とも云えます。微量な亜鉛が、現代の諸病根のいわゆるカナリヤの役を果たしているとも言えます。常識を覆すこと本当に大変なことですが、是非、是非、微量元素亜鉛に関心を持って頂きたいと思います。

ご静聴有り難うございました。

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